2025.01.30
【コラム】M&Aにおけるカーブアウトの意味と意義

戦略的なM&Aの選択肢として、検討されることのあるカーブアウト型のM&A。
M&Aにおけるカーブアウトとは、一体どのような意味があるのか、どのような手法なのか、基本的な考え方やポイントを解説します。
M&Aにおけるカーブアウトとは
M&Aにおけるカーブアウトは、売り手企業が事業や子会社を切り出して独立させること、またはその独立させた事業や子会社をM&Aによって売却することを指します。
M&Aの契約において「ある特定の事項を除外する」という意味でも、カーブアウトという言葉が使われることがありますが、ここでは前者のカーブアウトについて解説していきます。
カーブアウトが選択される理由はさまざまです。売却側から見ると、主力事業への集中、不採算事業の切り離し、資金調達の手段として、選択されることが多くなっています。
カーブアウト型M&Aの例
例えば、主力事業である法人向けの製造部門に加えて、消費者向けの製品開発・製造部門をもつメーカーがあるとします。
主力事業にリソースを集中させるために消費者向け製品部門を分社化し、M&Aにより売却するのがカーブアウト型M&Aです。
買収する立場から見たカーブアウトのメリット
カーブアウトされた事業の買収は、ターゲットとなる事業が独立して運営されているため、買収プロセスが比較的スムーズになるなど、メリットが多い場合が少なくありません。買収側から見たカーブアウトのメリットには、おおまかに次のようなものが挙げられます。
【主なカーブアウトのメリット】
・事業区分が明確で戦略策定リソース配分がしやすい
・明確な財務データや業績があるため投資判断しやすい
・カーブアウトされた事業と既存事業のシナジー効果を検討しやすい
・PMIプロセスを迅速かつコストを抑えて進められる
・カーブアウトされた事業に技術や特許があれば戦略的な優位性を得られる
次の表は、M&Aを目的別に類型化したものです。
この表にもある通り、M&Aにはプロダクトやブランドの獲得、顧客獲得、エリア拡大などさまざまな目的があり、M&Aを戦略的に進める上では、何のためにM&Aを行うかをきちんと設定することが大切です。
カーブアウトされた事業は、特定のビジネス領域に限定されているため、戦略的にM&Aを進めるにあたって、買収する事業のリソースや財務データ、業績が明確に把握できることから、事前に設定した目的やシナジー効果を検証しやすくなります。
例えば、下記の表は投資判断基準の一例です。
こうした具体的な投資判断基準をつくったとしても、買収対象企業の事業が複数にまたがっている場合は、正確に指標を把握し判断することは難しいものです。
一方、カーブアウト型M&Aであれば買収対象事業があらかじめ明確化されているため、GoかNoGoかを検討するためのリスクやシナジー評価の精度が高められます。
カーブアウトにおけるPMI
戦略的に攻めのM&Aを進めるために欠かせないのが、統合後の絵姿をきちんと仮説立てして検証することです。先ほども述べた通り、カーブアウトでは買収対象事業が明確なため、業績データや財務諸表を把握しやすいことから、比較的M&A後のシナジーを描きやすいと言えます。
また、統合後のPMIプロセスにおいてもカーブアウトされた事業はすでに独立した法人として運営されていることが多いため、業務プロセスや管理体制の把握やマネジメントを進める上のシナリオを描きやすくなるでしょう。